2011年5月29日日曜日

外部被爆/内部被爆と放射線基準値について

●はじめに
 ここしばらくは原発に関する話題を書いてきたが、実際に問題となる被爆限度や計測される基準についてはメディアや専門家の見解相違もあり、私自身も混乱するところが多くあった。この為に今回は頭の整理もかねて、自分自身できちんと科学的な見解を整理してまとめる事とした。そしてまとめた数字の上にもういちど私自身の見解の整理も行った。

 なおこの記事は、極力客観的な情報を信頼できそうなソースからまとめようと努力したが、放射線基準や考え方などは基準が作られた歴史的な経緯を考慮にいれなければ説明できないような部分もあり、こういった部分は資料を読み取った内容をなるべく簡潔にまとめた。これは一見すると科学的ではない態度にみえるかもしれない。私自身も多少の気持ち悪さを感じた。
 
 しかし過去の死者数に対するECCRとICRPの解釈の違いのように、国際政治が隠ぺいしてきたり、基準を作った組織に都合のよいような解釈がされてきたり、解釈には幾分かの歴史や政治が実際にはからんでいる。その中には日本の原爆被害もあり、むしろそこから始まったのだろう。私が短い間で見聞きしたのはほんの一部だと思うが、理解の参考になりそうな部分については私自身のコメントも載せてみた。


●放射線被爆基準、ICRP、ECRRの違い
 ニュースなどでさんざん目にした20ミリシーベルトなどの放射線被爆限度。日本はアメリカと同様でICRPをベースとしているが、欧州ではECCRをベースにしている。ICRPは基準が緩いのでこの点で日本と外国での危機に対する温度差がでている。ちなみに現在の日本は福島事故以降で基準が引き上げられたのでICRPの20倍といった異常な基準になっている。
  • ICRP=国際放射線防護委員会
  • ECCR=放射線リスクに関する欧州委員会
  • 日本(現在)=福島原発事故以降の基準



注1)過去の死者数
  1945年以降の原子力事業が引き起こした全ての死者数をECCR側が比較用に計算し直した数値(ガン死亡者数を基準としている) ECCRは内部被爆を考慮しているので死亡数がICRPより圧倒的に多い。これは直接放射の影響よりも、むしろ内部被爆に対する認識の違いと考えるべき。

注2)低線量被爆に対する認識
ここは私の解釈で記載。ICRPは1mSv以下はほぼ無視できるものと認識している。ただし世界的なトレンドとしては低線量だと被害ゼロではなく、応じて可能性は残るとしている。つまり少ない量なら少ないなりにガンリスクなどはあると言われている。ちなみに日本の御用学者は「安全安心の被害ゼロ」といった吹聴しているような状態なので省略した。

注3)内部被爆に対する認識
ICRPは元々内部被爆をあまり想定してい。モデルが単純化されていて、放射線を外部照射された単純時間計算で被害を割り出している。ようは物理実験的な見地での見解であり、内部に取り込まれた場合に臓器にどのような影響がでるかといった医学的な見地では語られてない。

・ICRP補足)放射線作業に従事する作業者(以下「作業者」という)に対する線量限度は、任意の5年間の平均で年あたり20mSv、すなわち100mSv/5年であるが、5年のうちのどの一年をとっても50mSvを超えてはいけないという条件が付与されている。

<コメント>
あらためて整理してみると、日本の現状がいかに異常かというのがわかる。もともと「20mSv/年」は放射線作業者の想定であり、放射線作業者とは病院などのレントゲン技師や、原子炉作業員のような予め被爆が前提になるような作業者の規格である。そしてもっと重要なのは「作業者=20mSv/年」というのは内部被爆がほぼ起こらない環境での作業を想定しており、埃にまじって放射性物質が舞っている状態や、影響のうけやすい子供や妊婦などを想定していないことである。

●ニュースと各所線量計の見かたについて
ニュースやネット記事などでは線量計で測った時間単位の放射線量を見る機会も多いので、それぞれが許容する数値をまとめてみた。ようするに「これを超えると危険」というデッドラインの数字である。






・ICRP:1mSv/年基準で考えた場合の、1時間あたり上限値=0.12μSv/h(0.19μSv/h)
算出の仕方は「1mSv/年」を時間に割戻した数値(0.12μSv/hを24時間×365日)。ちなみに文部省や東京都いわく「屋外に8時間、木造家屋内(低減効果0.4)に16時間で見積もると「0.19μSv/h」となる。(低減効果0.4という考え方が妥当かどうかは微妙だが参考に記載しておく)

<コメント>
これは単純に放射線を受けてはいけないという数字を時間単位になおしたものである。ただしもっとも危険なのは内部被爆なので、あくまでも参考値なのだと思う。しかしこの計測の仕方にも問題があって、どこでどう測るかによって数値がことなる。

1)日本政府、文部省など
空間線量、地上1.5m、もしくは地上10m以上などで、地面や地質の放射線ではない例が大部分と思われる。(おそらく特に説明が無い場合は地面と離れた空間線量を示している)

2)IAEA(国際原子力機関)
地表で測るの基本。問題となるのは地質汚染だという認識。

これ以外にも、放射性物質は土に付着し、水には沈み、コンクリート上では雨などに洗い流される。もっとも危険なのは内部被爆なので場所やケースを考慮すべきである。空間で測ってOKというのはむしろかなり甘い基準であり、本来は厳しめに地面や水などの累積を考慮した値や、実際に食物に混入される可能性を考慮するべき。


●内部被爆について
内部被爆については「矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教授)」の話を参考とした。他にも実際にチェルノブイリでボランティア活動をしている日本人(野呂美加氏)の体験談を合わせて聞いたおかげで、ようやく頭のなかで噛み合ってイメージができた。内部被爆については単純に数字で測れない、おそらく科学的にもまだ影響を証明しにくい部分だと思われる。だがあえて「矢ヶ崎克馬氏」の話を私が理解できたレベルでまとめてみた。

放射線にはそもそも下記の2タイプあり、波長の違いにより放射線の飛距離が異なる。
  • ガンマ線、長い距離飛ぶ(数メートル以上)
  • ベータ・アルファ線=4cm程度の短い距離しか飛ばない
一見すると長距離届くガンマ線の方が有害に思えるが、実際には短いベータ・アルファ線の方が人体へ与える影響が大きい。これは長距離を弱い力で発散するガンマ線に対して、ベータ・アルファ線は短距離で全エネルギー(大きなエネルギー量)を出し、結果としては物質に対する影響力が強い為である。これは想像しにくいので、強引に例えると次のようなイメージとなる。
  • ガンマ―線は長距離飛ぶが人体への影響がすくない。  (イメージとしては超極細の針で貫かれるようなもの)
  • ベータ・アルファ線は短距離だが人体への影響が大きい。(イメージとしては近くでショットガンを打たれるようなもの)
細い針でさされた場合は範囲が極小なので細胞内へのダメージも少なく、修復がしやすい。ショットガンで打たれたようなものは体内でのダメージ範囲が大きくて修復しにくい。実際は細胞内のDNAが破壊~修復する過程で問題がでるのだが、ダメージが広いほどDNAが誤って修復される率が増加してガンを引き起こす確率が増える。(イメージを例えるのは難しいが)

重要なのはここから導かれる次のポイントである。

「空間線量(地上1.5m)」が小さいから安全ではない。重要なのは食物や水からくる内部被爆である。よって問題は環境(土や水)の汚染である。(計測すべきは土や水)

<補足>
ICRPや日本で内部被爆が軽視されるのは、原爆以後の政治的な流れも歴史の背景にある。ICRPは元々アメリカが作った基準だが、これは広島・長崎の原爆投下のデータを元に作り上げたものだ。実際の原爆データを元に作ったならばこれは正確ではないかと一般人は思うかもしれない。しかし実態は、アメリカの立場で被爆被害は少なかったという事を証明する為に使われてきた。調査の過程で食物などによる内部被爆のデータは多く除外されたようである。

<「野呂美加氏」の講演より>
野呂美加氏の講演を動画で見たが、実際に体験したリアルな話は非常に参考になった。私が特に印象に残ったエピソードをピックアップしてみた。
  • 遠く離れた場所の方が内部被爆が酷い例があった。これは遠くへ飛ぶ(粒子が小さく飛びやすい状態)放射性物質の方が、植物などに取り込まれれやすいからだ。
  • ガンにならなくても子供健康被害は色々な形であらわれる。壊れたDNA修復に体内で余分なエネルギーを使うのでとても疲れやすい、老化が早いなど。
<コメント>
こう書いてはみたが、それでも私はこの内部被爆の危険さをうまく表現できていないと思う。だから多くの人には、内部被爆やチェルノブイリについて語る動画などを自分で見て欲しい。文字や数字だけでは伝えるのに限りがある。実際にその場をイメージ(想像)できなければいけない。

ここで福島事故の現状と比較してみよう。福島では食物の汚染基準が大幅に引き挙げられている。(「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」が解り易かった) 数字によっては100倍以上だったりして、外国からみれば正気の沙汰と思えないだろう。この汚染された食物が流通し、拒否すれば風評被害だ差別だといわれている。そして福島では子供の給食に使われている。

私は原発反対の立場であるが、「原発を推進する/しない」いずれにかかわらず、この内部被爆を止めるという事だけは全ての人が同意をしてほしい。これは誤魔化したり隠ぺいしたりできるレベルの問題ではない。おそらく平均寿命も下がってゆくだろうし、子供の死亡率もあがるだろう、そして病人だらけになってゆくかもしれない。もしも基準を変えないならば、日本人は国土を捨てて海外へ移住してゆくべきだと考える。


●まとめ
いままでは危険だとTwitterでコメントしていも、どうしても感覚的な部分があった。そして整理しなおしてみると「感覚的に思っていた以上に危険だ」ということが解った。(始めは整理するとちょっと安心するかな・・・と思っていたのだけど、逆だった・・・) なんせECCR基準だと東京もだめなるような状態だ。外国人が日本にこないのは正しい判断だ。

私はずっと政府やマスコミの隠ぺいに対して腹も立って非難もしてきたが、本当はかれらにちゃんとして欲しいだけである。隠すのではなく、公開したうえで問題と本質的に向き合って欲しかった。例えば、次のような現実的な議論をして欲しかった。
  • 汚染地帯の住人を移住させるべき。汚染地帯に対して無駄な復旧はしない。(人が住めない地帯に復旧など意味が無い)
  • 移住や疎開させることが困難ならば、食糧や水をすべて汚染地域外から搬入する。
  • 安全な食料確保が難しいならば、こどもの分を優先させる。
  • 汚染地帯ではなるべく内部被爆をさけるように、外出しないようにする。学校などならクーラーなどを全て設置するなど。
経済が保証がなどというが、現実に向き合わなければさらに事態は悪くなる。政府はパニックを避けたという。だが私は本当にパニックになっているのは彼らだとおもう。子供まで適用される20mSvを引き下げようと多くの人がデモをしている。デモを行っている人達の行動は現実的で妥当だし、本来あるべき姿だ。

特に最近みた記事では「福島みずほ症候群」(つまりは女の過敏なヒステリー)的な事を書いている某知識人もいた。100mSvまで安全だという学者もいた。本当にそう思っているならば、これは迷信よりも酷い現実錯誤である。やむを得ずそうしているならば、彼らの方がパニック(恐れて正しい判断ができていない)になっていると言えるだろう。

<参考>
・ICRP勧告の経緯と問題 そして アラーラ

・ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え

・ECRR リスクモデルと福島からの放射線

・依然として最大の脅威は内部被曝のリスク/矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教授)

・被曝と健康に関するリンク集 ② ~標準 ~
・ECRR 欧州放射線リスク委員会2003年勧告 放射線防護のための低線量電離放射線被曝の健康影響 実行すべき結論(Executive Summary)

・世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル

・野呂美加さんの講演会① 

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