2018年6月27日水曜日

映画「万引き家族」の感想、観どころ、考えどこ

 色々と話題になって気になっていた「万引き家族」をやって観てきたので感想文を書く。少しだけどんな映画かを説明すると、これは血の繋がってない訳ありな人達(老人から子供まで)が1つ屋根の下に暮らす日常を描いたものだ。ただちょっと従来のストーリーと違うのは、この映画では貧困や社会の矛盾というものがややコメディタッチでありながらも比較的リアルに描かれているという事だ。そして、まさにタイトルどおり親子で揃って生活用品を万引きするようなシーンもある。

 ちなみに私は、映画を見た人の為ではなく、これから見る人の事を想定して常に書く事にしている。なのでネタバレ的なことはここでは触れない。そしてできるならば他の人の批判や批評なども極力目にしないで、なるだけ先入観のない状態で映画を見て欲しい。この映画をみて各自がどう感じるのか何を考えるのか? 正直言って私には想像つかない。でもそれゆえに見る価値はあると思う。


 ちなみに私の感想はこうだ。

 「正直いって良くわからねぇ?」

 いやもちろん別にストーリーが分からないという訳ではない。そうではなく監督がこの映画で何を伝えようとしたのか、何を表現しようとしたのかがもうひとつピント来なかった。そして分からないからこそ、今こうやって文章にしながら私は自分の考えを整理しているのである。

 誤解が無いようにまず述べると「この映画はよく分からなかった」というのはこの映画をダメだと批判しているわけではない。過去にも同様によく分からないけど、もっと多くの人に見て欲しいと思った作品だっていくつもある。

 例えば直近でそう感じたのは「この世界の片隅に」だ。あの映画は内容的にも技術的にもとても優れた作品だと私は思う。だがそれでも私はあの映画で作者が何を伝えたかったのかがよく分からなかった。そしてその何かモヤモヤした感覚があったので、映画を見終わった後に原作「こうの史代」の漫画も読んで見た。でも余計に分からなくなっただけだった。
 でもそれは悪い事ではないのだと私は思う。あの時に感じたモヤモヤはきっと何かが形に(言葉に)なりそうで成らなかっただけなのだと思う。それは大抵、思念が自分の枠からはみ出た時に起こる現象だ。そしてそれらはとても刺激的で楽しい体験でもある。

 他に「万引き家族」を観て思ったのは、ネット上で色々と意見があったイメージとはずいぶん違うなという感覚だ。例えば一時期に話題となって「あの映画は赤裸々な貧困を描いていて日本の恥を示している」とか逆に「いままで隠されていた社会問題を描いた」というのを聞いてたが、私はちょっと違う気がした。

 確かに登場する貧困や人々はある意味生々しくて描かれている。だが別にそれらがドキュメンタリー的に描かれているわけではなく、むしろある種のメタファーやブラックジョークのような形で示されている。それらはおそらくこれらの要素があくまでもこの映画の味付けであって、本質ではない事を示しているのだと思う。

 私はむしろこの映画で表現しようとしたテーマは、貧困とか虐待とかある意味で極限状態におかれた人々が「いったい何を持って人間らしさ」または「人との絆」を保つことができるか?という問いだと思う。ゆえにこの映画は色んな人が見る価値があるのではないかと思う。
(好きになるか嫌いになるかは別としてね)

<補足>
・「万引きを助長するタイトルで犯罪を助長する~」という批判
 ここで描かれているのは世間的に見捨てられたような人々から見た逆転世界の風刺劇であって、犯罪を助長する/しないという批判は全く意味がない。もしもそういった事が気になる人がいるのならば、むしろこの映画を見て物語の中で何がもっとも罪深い行為だったのかと考えてみれば良い。

是枝裕和監督の『万引き家族』をネトウヨ批判 百田尚樹氏、高須克弥院長も言及
 なかにはこのような幼稚な批判をした人もいるらしい。でもこの映画が存在する事によって、逆に日本映画界も捨てたもんじゃないなと世界にアピールできたと思う。
 映画は娯楽であると同時に、疑問を持つきっかけを与えて人を成長させもする。なのでむしろ先入観を捨てて子供のように素直に物語に浸って見る事をお勧めする。

【万引き家族】安倍政権批判の是枝監督、こっそり「助成金」を利用していた事が判明し反響
 色々とある批判の中でこれが最もくだらない指摘だと思う。助成金の趣旨は優れた芸術や文化を作ることが目的だ。ならばその目的は十分に果たしている。むしろ芸術を追求せずに媚びたつまらない作品を作ることこそが冒涜であり無駄だ。
 むしろ私からすればクールジャパンみたいなのが一番、無駄でありなおかつ人々や文化に対する冒涜でだと思う。